第1部|はじまりの階:飛騨の匠、2000年の記憶
「飛騨の匠」
という言葉、聞いたことはあっても、その正体を知らない人は多いと思います
ミュージアム飛騨の1階は、“匠の記憶”が詰まった空間。飛鳥時代、飛騨の山々で育った職人たちは、都の宮殿や仏閣を建てるために召されました。彼らの建築技術は非常に高く評価され、奈良時代には全国の建設事業に必要不可欠な存在となっていきます
驚いたのは、そんな飛騨の匠たちが特別な身分扱いを受けていたということ
なんと、関所を自由に通れたり、税が免除されたりしていたという記録まで残っているそうです
それだけ、国家から信頼され、期待されていた証なのでしょう
“ただの職人”ではなく、“国家の技術者”
木の文化と共に生きてきた飛騨の人々の誇りが、展示のすみずみに息づいています

第2部|木の技術と時代の流れ:家具から戦闘機まで?
地下フロアでは、飛騨の家具文化の100年が展示されています
大正から始まった木工産業は、昭和に入り“椅子づくり”を中心に発展
飛騨の木材と職人の技術が融合し、「飛騨の家具」は高い評価を受けていきました
戦時中には、飛騨の木工技術でゼロ戦を木製で作る試みまであったそうです
金属が不足する中、木で飛行機をつくろうとした記録があるというのは、技術への信頼の深さを物語っています
そして戦後、高度経済成長期
この時代、飛騨の家具づくりは他の林業との差別化として、
**“注文に応じて作る”**
というスタイルを確立していきます
大量生産ではなく、必要とされるものを丁寧につくる姿勢が、ブランドとしての飛騨木工を育てていきました
展示の中では、時代ごとのデザインや材料の変遷をたどることができ、
木の技と、時代を生きる知恵の両方を感じることができます

第3部|100脚の椅子に、座るという体験
そして、地下の一角に広がるのがミュージアム飛騨の名物――100脚の椅子
すべて飛騨の職人がつくった椅子で、実際に座ることができます
見た目は似ていても、座った瞬間に伝わってくる感触はそれぞれ違う
ふわっと包まれるような椅子もあれば、ピンと背筋が伸びる椅子も
「家具は使って初めて意味を持つ」
と言いますが、まさにその言葉を実感できる空間でした
座るたびに、職人の意図や心配りが“体を通して”伝わってくるようで、ただの展示を超えた時間になります

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